こんにちは。
綾部です。
みなさんは、「このシューズ、捨てるのはもったいないな」と感じたことはありませんか?
お気に入りだったけれど使わなくなってしまった靴、型落ちで販売されなかったサンプル、サイズが合わず眠ったままのスニーカーなど。
そういったシューズの行き先は、これまで主に「廃棄」一択だったのですが、最近では少しずつ、その選択肢に再利用の取り組みが加わりつつありますね。
今回ご紹介するのは、アシックスとカリモク家具が協業して生まれた、廃棄予定のシューズを原料にしたソファです。
「靴から家具?」と最初は驚いてしまいますが、この記事ではその仕組みや工夫、そして背景にある発想について見ていきたいと思います。
使われなかった靴が、ラウンジを彩るソファへ変身

2025年5月、アシックスとカリモク家具は、廃棄予定だったアシックスのシューズを原料にしたソファを製作したと発表しました。
参照:アシックス、廃棄予定のシューズを原料としたソファ カリモクと協業(2025年5月8日時点)
これは販売を目的としたものではなく、東京都千代田区にあるアシックスジャパンの新オフィスで使うためのもので、全14台がラウンジやミーティングスペースなどに設置されています。
原料となったのは、デッドストックやサンプル、規定外で市場に出なかったシューズだそうです。
これらを粉砕し、素材ごとに分別・再利用したのが、今回の取り組みの出発点とのことです。
粉砕されたフォーム材は、綿と混合してクッション性を調整し、柔らかさと反発力のバランスを持たせて座面に使用されています。
また、座面の表面には、同じくフォーム材を固めた厚さ3mmのシートを重ねて、しっかりとした座り心地を確保しているそうです。
さらに面白いのは、座面だけでなくソファの表面やオフィス内の吸音パネルにもシューズ由来の素材が使われていることです。
リサイクルスニーカーの技術が生んだ、次なる循環型プロダクト

今回のソファ制作には、アシックスがすでに展開しているリサイクルスニーカー「NEOCURVE(ネオカーブ)」という商品の開発技術が活かされているそうです。
NEOCURVEは、ヨーロッパ限定で2024年11月から発売されているモデルで、シューズのデッドストックや不良在庫を原料に、新たなスニーカーとして再生したものだそうです。
オランダに拠点を置くリサイクル企業Fast Feet Grinded社によって、シューズは素材ごとに分解・再構成され、アッパーやソール、中敷きなどの各部品に活用されています。
これと同じ手法を家具づくりにも応用したのが、今回のソファというわけですね。
シューズの再利用先としてスニーカー以外の製品が誕生したのは初めての試みであり、「NEOCURVEから広がるリサイクルの輪」という意味でも注目されているようです。
ファッションやスポーツ業界では、「サステナブル」「エシカル」といった言葉が日常的に語られるようになって久しいですが、こうした具体的で実用的な取り組みが、生活者の実感につながるものかもしれませんね。