こんにちは。
綾部です。
みなさんは、下水道や水道管といった地下のインフラがどのように点検・管理されているのか、ご存じでしょうか?
私たちが普段の生活で気にすることは少ないかもしれませんが、これらのインフラは老朽化によるトラブルが発生すると、生活に大きな支障をきたすことがあります。
そのため、定期的な点検が必要とされていますが、従来は非常に手間と危険を伴う作業でした。
最近では、そうした課題に対処するために、AIとドローンを組み合わせた新たな点検方法が導入されているそうです。今回は、米国ミシガン州のマコーム郡で行われている事例をもとに、地下インフラ点検について紹介したいと思います。
巨大な陥没事故が点検技術の見直しのきっかけに

日本でも2025年に大きな話題となった下水道陥没事故が起きましたが、アメリカでは、2016年のクリスマスイブに、ミシガン州で大規模な陥没事故が発生したそうです。
参照:下水管ドローンとAIが変える地下点検の未来(2025年5月25日時点)
直径約3m、地下21mにある下水幹線が崩壊し、住宅が沈み込むという深刻な事態に。結果的に近隣住民の避難や道路の閉鎖が相次ぎ、約1.2kmにわたる下水管の全面交換と周辺地域の復旧には、1億ドル以上の費用がかかったとのことです。
この事故を受けて、マコーム郡では地下インフラ点検のあり方を見直す機運が高まったそうです。従来の点検では、カメラを搭載したクローラーを操作するか、作業員が下水管内に入って行うなど、非常に危険で効率も悪かったとのこと。そうした背景から、安全で迅速な点検手段としてドローンの活用が始まったようです。
下水管内で活躍する専用ドローンたち

下水管内で使用されているドローンの一例として、スイスのFlyability社の「ELIOS 3」やFlybotix社の「ASIO X」が紹介されています。ELIOS 3は外骨格に覆われ、照明や4Kカメラ、LiDARを搭載しながら3Dマッピングを行う機能を持っているとのこと。ASIO Xは40,000ルーメンのライトで暗所でも鮮明な映像を撮影可能で、狭い空間でも安定した飛行が可能とされています。
ドローンの操作は、基本的にマンホールからマンホール間を飛行させ、1回のバッテリーで約300mの距離をカバーするそうです。点検作業では、映像撮影に加えて、有害ガスの検知や赤外線スキャンなども行われ、作業員の安全確保と点検の効率化が進められているようです。
さらに、従来よりも費用を約40%削減でき、1日に確認できる距離も倍増したとのこと。作業人員も減らせるため、現場の負担も大きく軽減されたといいます。
AI解析による点検精度とスピードの向上

ドローンが取得した映像やデータは、従来は人が目視で確認していたそうですが、今では「SewerAI」というAIソフトを使った自動解析が導入されているとのことです。ひび割れや劣化をAIが瞬時に検出し、補修が必要な箇所を効率的に特定できるようになったと報告されています。
マコーム郡では、検査とデータ解析に毎回約1.4億円がかかっていたところ、ドローンとAIを活用することでそのコストが大きく抑えられたそうです。分析も早く、通常は数カ月かかっていた処理が、24時間以内に完了するケースもあるとのこと。
AIによる解析は、従来の方法で見逃されがちだった不具合も検出できる点で評価されており、郡では過去の検査映像もこのAIで再分析しているといいます。これにより、修理の優先順位を適切に決めることができ、大規模な事故を未然に防ぐことが可能になるとのことです。
こうした報道を読むと、ドローンとAIの導入が地下インフラの点検においてどれほど効果的なのかがよくわかります。
日常生活の中では目にすることのない下水道や水道管といった設備ですが、安全で安定した暮らしを支えるためには、こうした見えない部分の管理が極めて重要であることが改めて感じられました。
これから先も、技術の進展により点検の効率と精度が高まり、より持続可能で安心できる都市インフラの実現につながっていくのではないでしょうか。