こんにちは。
綾部です。
宇宙や天体はもちろん、社会の仕組みそのものを変えてしまうようなテクノロジーの原理には興味を持ちたくなりますよね。そうした背景から、最新の技術動向を追いかけるのが本当に好きです。
さて、今回は少し専門的な話題かもしれませんが、私たちが日々使っているデジタル社会の根幹、つまり計算の仕組みそのものを塗り替えてしまうかもしれない技術、量子技術について見ていきたいと思います。
つい最近、日本政府の政策決定の中で、この量子技術の位置づけが非常に大きな転換を迎えました。それは、単に研究が進んでいてすごいねという話ではなく、国家が生き残るための基盤として扱われ始めたという、重要な動きなんです。
今回は、なぜ量子技術が国家戦略の中心に躍り出たのか、そしてこれが日本の未来保全にどう関わるのか、その重要性を物理好きの視点から掘り下げていきましょう!
量子とは何か:一本道の限界を超える新たな計算体系
政府は2025年11月21日、総額21.3兆円規模の総合経済対策を決定しました。この枠組みは、一時的な景気対応ではなく、危機管理投資と成長投資を一体として進める国家設計にある、というのが大きな特徴です。
参照:量子が国家を守る時代へ――高市政権の総合経済対策が示した「次の抑止構造」研究領域から国家の未来設計へ(2025年11月24日時点)
この政策説明の中で、半導体、AI、宇宙といった戦略分野と並び、量子技術が戦略分野として明確に明記されました。量子技術は依然として研究開発段階にあり、商用利用が本格化しているとは言い難いにもかかわらず、政府はこれを半導体やAIと同じ層に置き、複数年度にわたる長期投資枠の対象として扱ったのです。
この政策的判断が示しているのは、量子技術が役に立つから投資する技術から、持たなければ国家リスクとなる技術へと、その性格づけが変わりつつある、ということです。
量子技術とは具体的に何を意味するのでしょうか。
ソースでは、量子技術は既存のコンピューターの延長線ではなく、情報処理の仕組みそのものが異なる技術体系だと説明されています。
現在のコンピューターが0か1かのどちらか一方のみで世界を表現するのに対して、量子コンピューターは量子力学の特性である重ね合わせ(superposition)と量子もつれ(entanglement)を活用し、0と1を同時に扱うことができます。
従来の計算が一本道を順番に進む車のようなものだとすると、量子計算は複数の道を同時に走り、最適解だけを返すようなイメージです。つまり、量子技術とは処理速度を単純に高める強いCPUではなく、問題解決の方法そのものを再定義する計算体系だということです。
量子技術が注目される理由は、これが成立すると既存のデジタル社会の前提が大きく変わってしまうからです。
具体的には、経済、安全保障、医療、金融、宇宙、科学研究など多くの基盤を再設計する潜在力を持っています。現在広く使われているRSAや楕円曲線暗号は、量子計算が成立すれば短時間で解読可能になる恐れがあります。
しかし脅威であると同時に、量子鍵配送(QKD)や耐量子暗号(PQC)といった新たな防御体系も生まれています。各国が急ピッチで制度設計を進めているのは、量子をめぐる競争がすでに安全保障の再設計競争へ移っているからです。
そして、量子技術を持つ国と持たない国では、将来における競争力の差が大きく開くと見られています。米国、中国、EUが国家プロジェクトとして投資を拡大している背景には、量子技術を持たないこと自体が国家リスクになるという危機意識が存在します。
依存から設計へ:量子投資は日本の国家主権と未来保全の意思表明
今回の総合経済対策における量子技術の扱いは、社会を便利にする発明ではなく、国家が生き残るための基盤技術であるという認識への転換点だといえます。
ソースによれば、量子技術は次の段階に進んだと解釈できます。
導入を検討する技術 → 存在が前提となる技術
研究助成対象 → 国家が継続投資する技術
将来の市場候補 → 国家が制度と市場を設計する領域
これは単なる技術政策の分類変更ではなく、日本がどの未来像を選ぶかという国家的決断に近いものです。量子を持つ国家を目指すのか、それとも他国に依存する国家になるのか―その答えが政策文に示されています。
方向性は明確です。依存ではなく自立へ。追随ではなく設計する側へ。
不確実性が高まる国際環境において、技術を持たないことは最大の脆弱性です。逆に、技術を自ら支配し更新できることは、国家の抑止力になります。今回の量子投資は未来の競争に勝つためというより、未来を他国に委ねないための選択であり、日本の安全保障、経済基盤、国家主権を未来へつなぐ「未来保全」の意思表明だといえるでしょう。
かつて私がワクワクしながら追いかけた宇宙開発のインフラも、いま私たちが依存するデジタル社会の基盤も、量子技術によって再定義される時代が来つつあります。研究室の片隅にあった技術が、一気に国家生存戦略の基盤へと昇格したのです。
今回の量子技術への長期投資は、単なる技術支援ではなく、自国で未来の構造を設計するための「未来への主権の確保」にほかなりません。
量子技術への投資とは、未来の扉を開く鍵を自国で育て、管理し、他国に依存しない構造を築くこと。一本道で情報が解読されるリスクから社会を守り、複数の未来の可能性を同時に計算することで最適な生存ルートを選ぶ――そんな国家戦略そのものですね。